コールセンターの稼働率とは?占有率や応答率との関係性や計算方法を紹介
2020.04.23|⟳ 2025.06.10|コールセンターコールセンターには日々さまざまな問い合わせが寄せられるため、業務中は常に多忙な状態であるといえます。
企業経営の観点では、時間あたりの対応数を増やすことで、費用対効果を向上させられます。
そのためには現状を数値化することが重要で、現場と管理者で認識を共有することにより、改善が実現できます。
本記事では、コールセンターの稼働率について、占有率や応答率との関係性や計算方法とあわせて解説します。
コールセンターの稼働率とは
コールセンターにおける稼働率とは、給与が発生する時間のうち顧客対応した時間(生産時間)の割合を表します。具体的には通話時間や入力などの後処理作業などが、この生産時間に入ります。
稼働率:非生産時間を含めた業務の割合
稼働率における非生産時間とはトイレ休憩や研修など顧客対応以外の時間を指します。
稼働率を算出する方法は2通りあります。1つは生産時間を給与が発生する時間から非生産時間を引いた時間で割ったもの、もう1つは生産時間を給与が発生する時間の総数で割ったものです。
経営者の方は、後者の非生産時間を含めた稼働率を確認し、業務の生産性がどの程度なのかをみる必要があります。
適正な稼働率の維持が重要
稼働率が高ければ良いとは限りません。
稼働率を上げようとするあまり、研修やミーティングなどの教育や連絡に費やす時間が不足したり、オペレーターのストレスや疲労が蓄積したり、質が低下することが懸念されます。
また、稼働率が低い場合としては、単に新人オペレーターが多いという場合がありますが、それ以外に人員が余っている場合や監視(業務を怠っているかどうか)が不十分な場合が考えられます。
よって、高すぎても低すぎても問題があると疑う必要があります。
コールセンターの稼働率が重要な理由は?
目標を立て目標達成のための施策を講じるには、運営状態の把握ができていなければなりません。
稼働率を定期的にチェックして分析すれば、コールセンターの運営状態が見えてきます。
そのため、稼働率はコールセンターにとって極めて重要な情報です。
例えば、稼働率を分析すればオペレーターがどれだけスムーズに業務をこなせているかがわかります。
そのスキルレベルを推測することも可能です。
さらに、コールセンター業務の受付体制に過不足がないかを知ることもできます。
突き詰めて分析すれば、離職リスクの把握もできるでしょう。
また、分析によって生産時間と非生産時間の適切な管理ができるようになります。
もし、午後に集中的に稼働率が高まっているのなら、午前中に研修や会議といった非生産業務を割りあてると、業務のバランスがよくなります。
稼働率の計算方法
稼働率は、以下の計算式で求められます。
- 稼働率(%)=(通話時間+後処理時間)÷ 勤務時間 × 100
計算例
一例として、下記条件にて稼働率を設定します。
- オペレーターの勤務時間:8時間(480分)
- 通話時間:240分
- 後処理時間:60分の場合
この場合、稼働率は下記のようになります。
稼働率 = (240分+60分)÷ 480分 × 100 = 62.5%
稼働率が高いほどオペレーターが積極的に業務を行っていることを示します。
しかし、過剰な負担につながる可能性もあるため、適切なバランスが重要です。
コールセンターの稼働率の適正値
コールセンターには「COPC® CX規格」という国際品質保証規格があり、この規格はコールセンターのパフォーマンス改善に利用されています。
「COPC® CX規格」によれば、コールセンターの稼働率の指標値は1カ月あたり平均86%です。
また、日本のコールセンターの多くは、80%から85%を適正ラインとして、稼働率を設定しているそうです。
もし、稼働率90%以上の場合は、何らかの運用上の問題があるか、運用上のリスクを抱えていると考えられています。
逆に稼働率70%未満は、効率的なコールセンター運用がなされていない可能性があります。
人員の再配置が必要であるといえるでしょう。ただし、コールセンターの稼働率は人員のスキル・季節・曜日といった要素で変化します。
そのため、一時的に適正値から外れる値が出ることは珍しくありません。
コールセンターの占有率とは
占有率は稼働率と同じ顧客対応時間を指します。
しかし、稼働率とは全く異なる数値のため、区別する必要があります。
占有率:生産時間中に占める顧客対応の割合
生産時間(顧客対応時間)に対する通話時間や保留時間、後処理時間の割合です。
電話待機時間は除きます。通話時間が長く、通話待機時間が短ければ占有率は高くなります。つまり、電話待機時間によって占有率は変動します。
占有率の許容範囲は76から87%
占有率が高ければ良いとは限りません。
占有率の設定を76から87%にすることが望ましいです。
占有率の割合を調整することで、オペレーターのストレスや疲労に配慮することができ、応対の質の維持やモチベーションの向上につながります。
適正な占有率の維持が重要
占有率が高いということは、1コールあたりの対応時間が長すぎる場合や、人員が不足していて顧客を待たせている可能性が考えられます。
占有率が高すぎるとオペレーターが忙しく疲労し質が下がる懸念があります。
また、占有率が低すぎる場合は、人員が余っている場合が考えられ、配置の検討や時間帯による占有率を分析する必要があります。
占有率の計算方法
占有率は次の計算式で算出されます。
占有率(%)= 通話時間 ÷ (通話時間+待機時間) × 100
計算例
一例として、下記条件にて占有率を設定します。
1日の通話時間:300分
待機時間:100分
占有率 = 300分 ÷ (300分+100分) × 100 = 75%
この場合、オペレーターは75%の時間を顧客対応に費やしていることになり、先述した許容範囲と比較すると少し低い状態です。
ただし、占有率が高すぎるとオペレーターのストレスが増加し、離職率が高くなるリスクもあるため、適切な管理が求められます。
稼働率と占有率・応答率の関係性とは
顧客対応に関する指標には、稼働率・占有率のほかに「応答率」もあります。
応答率は「顧客がかけた電話(着信)に対する応答の割合」を指す言葉です。
この3つは、どれも顧客対応に関する指標のため、混同されるケースも少なくありません。
しかし、各指標は関連しあっているため、適切に区別した上で総合的に管理することが重要です。
以下でそれぞれの違いと関係性をご説明します。
稼働率と占有率の関係性
稼働率と占有率はどちらも顧客対応時間を指しますが、占有率は電話待機時間を除いた時間になります。
稼働率は給与が発生する時間に対する顧客対応時間の割合です。
一方、占有率は稼働率に対する電話待機時間を差し引いた(顧客に関わっている)時間の割合となります。
一見似ていますが、全く異なるものです。
稼働率に対して占有率が高い場合は、電話待機時間が少なくなっていることを表します。
そのため占有率を管理することは、オペレーターの健全な業務環境を整えることにつながります。
また、稼働率に対して占有率が低い場合は人員が余っているため、配属等を見直すことが望ましいです。
稼働率と応答率の関係性
応答率は顧客がかけた電話(着信)に対する応答の割合です。
コールセンターへのつながりやすさの指標となります。
稼働率が高ければ応答率が高いかというとそうとは限りません。
人員が不足していて応答できない場合は稼働率が高くても応答率は下がります。
その場合は配置を見直すか新規採用を検討したほうが良いでしょう。
また、オペレーターの対応能力が不足しているようであれば、教育する時間を提供することでスキルアップやモチベーションの向上につながります。
稼働率を向上させるメリット
コールセンターで稼働率を向上させることには、さまざまなメリットがあります。主なメリットを以下に示します。
- 業務効率の改善:オペレーターの生産性が向上し、顧客対応の品質が安定します。
- 顧客満足度の向上:迅速な対応により、顧客の待ち時間が短縮され、満足度が高まります。
- コスト削減:効率的な運営により、コストパフォーマンスが向上し、収益改善につながります。
- KPIの達成:設定した業績目標に対して高い達成率を実現できます。
効率的な稼働は、顧客体験の向上だけでなく、企業全体の業績向上にも寄与する重要な要素です。
稼働率を無理に上げた場合のデメリット
一方で、稼働率を無理に引き上げることにはリスクも伴います。以下に、その代表的なデメリットを示します。
- オペレーターの疲労:過度な対応により、オペレーターの疲労が蓄積し、離職率が高まる可能性があります。
- 品質低下:対応スピードを重視しすぎると、顧客とのコミュニケーション品質が低下する恐れがあります。
- ストレスの増大:高い稼働率が続くと、オペレーターの精神的負担が増し、職場環境の悪化につながる可能性があります。
- 顧客満足度の低下:対応品質の低下は、顧客満足度やブランドイメージの低下を招くリスクがあります。
これらのリスクを踏まえたうえで、適切な稼働率の維持が求められます。
無理な目標設定や過度な負荷を避け、長期的な視点で業務を改善しましょう。
稼働率とそれに関連するKPIは?
コールセンターの運営状況を正しく判断するには、稼働率だけでなく関連するKPI(重要業績評価指標)も合わせて分析することが大切で、特によく使われる指標は「応答率」と「占有率」です。
また、その他によく使われるKPIは以下となります。
AHT(平均処理時間)
AHT(Average Handling Time)は、1件あたりの「通話時間+保留時間+後処理時間」の平均です。
AHTが短いほど、オペレーターが多くの問い合わせに対応でき、効率が上がります。
AHTの短縮は収益向上の鍵です。
ATT(平均通話時間)
ATT(Average Talk Time)は、1件あたりの通話と保留を含めた平均時間です。
ATTの改善には通話内容の見直しや指導が有効ですが、内容によっては短縮が難しいケースもあるため、慎重に判断しましょう。
ACW(平均後処理時間)
ACW(After Call Work)は、通話後の事務作業にかかる平均時間です。
オペレーターごとの差が出やすいので、スキルアップや入力補助ツールの導入が効果的です。ただし、記録内容の正確さも重要なため、短縮だけを重視しないよう注意しましょう。
CPC(1コールあたりのコスト)
CPC(Cost Per Call)は、コールセンター全体のコストを対応件数で割った1件あたりのコストです。
算出方法や含めるコストの範囲は企業ごとに異なりますが、できるだけコールセンター運営に関わるすべてのコストを明確に区分して計算しましょう。
どのコストが大きく影響しているか把握しやすくなります。
コールセンターの稼働率を適正に保つポイント
稼働率は8割程度に保つことが望ましいです。それには需要の高い時間帯や曜日、時期などを分析し、オペレーターの人数を調整する必要があります。
それだけでなく、コールセンターの稼働率を適正に保つためには、生産時間と非生産時間のバランスを取ることが重要です。
そのため、待機時間がある場合には教育する時間として有効活用することも大切です。また、ステータス管理などのマネジメントも効果があります。
オペレーターの人数調整を行う
人数の調整を行うためには、時間・日・月単位ごとにオペレーターの業務量を測定し、分析する必要があります。
また、午前と午後で業務量が異なる場合も同じように分析したほうが良いでしょう。
それによって応答率の増減や人件費削減、非生産時間とのバランスを取ることにつながるからです。
待機時間に教育を行う
待機時間が長い場合、教育の時間にあてることをおすすめします。
コールセンターは1日の中でも忙しい時間と落ち着いている時間があるからです。
忙しい時間だけ都合良く勤務してもらうことはできません。
そのため、待機時間に教育を行うことはオペレーターの質の向上やモチベーション向上につながる有意義な方法といえるでしょう。
また、初期研修以外に、業務内容の変更や追加などオペレーターのステップや目的に合わせて適宜教育を行うことが望ましいです。
ステータス管理を行う
稼働率を正確に管理することはとても重要です。
その際、ステータスを管理するシステムを使うと便利です。
例えば「通話中」や「研修中」などのステータスを管理することができます。
ステータスの種類が多すぎると手間がかかり使用しにくくなるため、円滑に使える範囲の数を設定します。
そして、システムを使用する場合はステータス管理の規則を周知し、守ってもらうことが大切です。
これらを管理することで正確な稼働率を把握することができます。
おわりに
本記事では、コールセンターの稼働率について解説しました。
コールセンターの稼働率は給与が発生する時間のうち、顧客対応した時間(生産時間)の割合を表します。
また、コールセンターの業務を数値化する際、占有率も参照します。
生産時間(顧客対応時間)に対する通話時間や保留時間、後処理時間の割合です。
これらを最適化・最大化するためには、オペレーターの人数調整や教育時間の確保、ステータス管理などを行います。
KPI・目標を設定する際には、抽象的なものではなく数値的根拠に則った具体的なものにしましょう。
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「コールセンター委託ポイント」についてはコールセンター委託ポイントを徹底解説!の記事もぜひご参照ください。
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