コールセンター委託のノウハウ・導入事例
顧客のニーズが多様化するのに合わせ、企業の対応も柔軟性と迅速性が欠かせない時代に突入しました。また、商品やサービスに興味を持ってもらう取り組みも同時進行しなければなりません。見込み顧客を獲得するには積極的に情報を発信する必要があるのです。コールセンターは、そうした受信と発信の要となりますが、委託するのであれば何をチェックすればいいのでしょうか。ノウハウを解説しながら、導入例を紹介していきます。
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コールセンターの立ち上げ方
コールセンターを立ち上げることによって、自社の商品やサービスについて疑問や質問を受け付けたり、実際に利用した人たちからの感想や苦情等を聴くことができたりします。また、類似商品や新商品に関する情報を発信することもできます。自社内に立ち上げると、顧客からの声が届きやすくなり、自社製品を迅速に改善できるようになります。しかし、専門部署を設けなければならないため、人員や場所を確保することはもちろん、電話・ネット回線を開通させたり、デスクやパソコン一式を揃えたりする必要があります。相応のコストが発生し、それらを日々管理、維持しなければなりません。
このデメリットを克服するには、コールセンターの委託が便利です。業務をアウトソーシングすることで、自社内にコールセンターを置くよりも負担が減り、リソースを取られる心配もなくなります。
コールセンター委託の基本的な流れ
コールセンターを委託する場合、先ずは「なぜ自社内に置かず外注するのか」という点を明確にしておかなければなりません。その目的意識が定まっていないと社内のコンセンサスが得られず、見切り発車することになります。委託はコストマネジメントの一環であり、コールセンター特有の業務から解放され、本業(コア業務)に専念するための策だという社是が必要なのです。委託という思いき切った業務の合理化によって、生産性が向上し、社員の動機付けにもなることを浸透させた上で踏み切る、というのが筋道になります。目的が定まることで、業務の工程も見えてくるため、具体的なシステム設計が可能になります。 設計作業では、業務の工程を取りまとめ、内容と流れを確認し、それらをどう管理するのかという点に踏みこんでいきます。業務の進捗率や成果を確かめるための指標の設定も併せて行い、コールセンターに必要な人員や彼らを教育するプログラムの準備についても検討しなければなりません。これらのソフトが揃ったら、必要器材や管理マニュアルといったハードを準備します。
コールセンター委託の方針とゴールの設定
コールセンターを自社内に設けている企業はありますが、人員や設備の維持・管理にコストがかかります。また、繁忙期と閑散期の区別なくそれらを一定水準に維持しておかなければならず、費用対効果の面から考えても無駄が多くなりがちです。そこで、昨今ではコールセンターそのものを委託する企業が増えてきました。アウトソーシングすることで電話対応等の負担を減らし、本来の業務にリソースを費やせるというメリットがあるからです。しかし、なぜ委託が必要なのかは、社内で共通認識のレベルまで高めておかなければなりません。自社のゴールがどこにあるのかが分からなければ、委託が単にコストを下げるためだけに利用されてしまいます。 生産性を高め、業績を上げ、業界を牽引できる存在になるためだということを、日々の業務の中で確認できる環境づくりが必要です。
コールセンター委託時の注意点
コールセンターを委託すれば、顧客からの要望や苦情等を電話対応する必要がなくなりますし、顧客名簿をもとにした商品やサービスの発信にも手間取らずに済みます。このインバウンドとアウトバウンドから解放されることから、コア業務の作業効率をアップさせることができるというわけです。しかし、委託する場合は見積もりが要ります。具体的な内容を記した見積書が代行業者から送付されますので、その詳細が自社の要望と合致しているのかを確かめなければなりません。見積もりは各社で差があり、最も特徴が強く現れるため、客観的なデータや鮮度の高い市場調査に基づいているのかを見極める必要もあります。
コールセンターの指標となるサービスレベル
コールセンターをアウトソーシングしても、目標としている数値や成果が未達成なら意味がありません。その運用と管理は、契約を交わしている限り、日々実行される必要があります。そこで欠かせないのが中間指標であり、用いられる重要業績評価指標のことをKPIと呼んでいます。コールセンターのKPIには多種多様なものがあり、企業によっては2ケタの指標で管理しているケースも見られます。その中のひとつがサービスレベル(SL)であり、顧客からの着信に対応できた時間の割合が評価対象となります。着電の80%に20秒以内に応えることを目標としています。
これはサービスレベル95%以上を意味しており、委託するのであれば、顧客の待ち時間をなくす取り組みに積極的な業者が有用です。
確認すべき重要なポイント
コールセンターの業務は、顧客からの電話に応じるインバウンド、コールセンターから電話をかけるアウトバウンドに大別されます。インバウンドの場合は、多種多様な質問・要望・苦情に対して柔軟で良心的な対応が求められます。そのため、経験やデータに基づく対応技術が欠かせません。アウトバウンドは企業と個人に向けて情報を発信するため、BtoB・BtoCに通じていなければなりません。インバウンドとアウトバウンドは違ったベクトルを持つ業務であることから、アウトソーシングする場合は、自社のニーズに合致した業者をセレクトする必要があるのです。
現状の調査・課題
自社内にコールセンターを構えている場合、その体制が経営にどれだけ貢献しているのか、という点を調査(アセスメント)する必要があります。具体的な数値で現状を把握できることはもちろん、コールセンター業務を「見える化」することによって、客観的かつ機能的な改善策を講じることができます。コールセンターの運用で生じる課題を見つけ出し、今後どのように運営すればいいのかを明確にするためでもあります。自社に置いたままでいいのか、委託へ舵を切るべきではないか、という重要な意思決定を行う際に不可欠な判断材料となります。
コールセンターなどの運用プロセスを洗い出し
コールセンターを自社内で運用している場合はもちろん、これから立ち上げようと検討している場合でも現状の把握は欠かせない作業です。既にコールセンターを運用しているのであれば、人員の配置や数は適正か、機材は足りているか、応対技術に問題はないか等を精査しなければなりません。技術不足が感じられるとすれば教育プログラムの見直しは必要ですが、スタッフの許容量を超えた負荷がかかっていなかどうかを調べることも重要なポイントになります。これからコールセンターを立ち上げるのであれば、業務委託を含めた検討が課題となります。アウトソーシングする場合は、代行業者の提案する運用プロセスが自社の要望に合致した内容か、慎重に見極めなければなりません。
オペレーターやスーパーバイザーなどの運用体制、管理体制
コールセンターで実働し、顧客から生の声を聞くのがオペレーターです。自社の商品やサービスについて、顧客の要望や質問、苦情を受ける立場にあります。また、新商品の発売やキャンペーン情報等を顧客に発信する作業もあり、それぞれの業務には相応の技術が求められます。しかし、経験には違いがありますし、自ずと能力に差が生じます。彼らが上手く業務を回せるよう、日々、指導や管理をしなければならないのがスーパーバイザー(SV)です。オペレーターは多忙を極めますが、SVは、彼ら以上に大きな責任と負担を感じていることが多いため、適切な評価と納得できる待遇が欠かせません。オペレーターとSVの立場の違いを明確化し、双方が立場を尊重できる管理体制が必要となります。
組織体制
コールセンターの主役は、実際に電話を取り、顧客対応に追われているオペレーターです。インバウンドはもちろん、アウトバウンドでも活躍する要のポジションで、彼らの上位にいるのがまとめ役のリーダーです。オペレーター業務をこなしながら、同僚たちを指導したり、至らない部分をサポートしたりします。彼らを指導・管理するのがスーパーバイザーで、難しいクレーム対応でより力を発揮します。このスーパーバイザーは中間管理職であり、マネジメント業務には携われません。行えるのは彼らの上に位置するマネージャーからです。マネージャーは部門の統括業務を任せられており、コールセンターの運営を担っています。 コールセンター全体の責任を負うのがセンター長で、組織の在り方を決め、今後の戦略について方針を決定する立場でもあります。それに加えて、コールセンターの改善点を洗い出し、応対レベルの質を管理するクオリティ・アシュアランス(QA)も組織で活動しています。
教育トレーニング
QAからの評価で、オペレーターの応対品質が一定レベルを超えてないと判断された場合は、顧客の満足度が低下しているかもしれません。自社の商品やサービスへのクレームだけでなく、対応の拙さそのものに苦情が出ている可能性もあります。明らかな実害であり、自社の評判を著しく低下しかねない問題です。早急に改善しなければなりませんが、そのときに必要なものが教育トレーニングです。新人教育の場で必須となりますが、日々の応対品質を維持・向上させるためにも重要視する必要があるのです。コールセンター向けのフォローアップ研修を行っている企業は多く、公開研修はもちろん、講師を派遣してくれるタイプもあります。公開研修であれば1名から参加でき、研修がどういうものかを試す場合にも有用です。
コールセンターの設計
これからコールセンターを立ち上げるという場合は設計構築が欠かせません。自社が理想とする姿と目指すゴールを明確化し、その達成に向けて不可欠となるKPIも決定しなければならないのです。さらにオペレーターの採用に直結するミニマムスキルやキャリアパスの基準、どのような教育プログラムを導入するかを設定します。また、人員と同様に重要なのがシステム本体の構築です。電話回線やPC等のネットワークを最大限に活用するためにはCTIの導入が欠かせませんし、自社と顧客の繋がりを管理するための土台になるCRMも要ります。 現在、コールセンターを運営しているのであれば、運用改善業務に取り組まなければなりません。評価基準、採用基準、システム管理の再評価を行い、重大な問題が発覚した場合は業務委託の検討も視野に入れる必要があります。
業務プロセス
システム設計の際に注意しなければならないポイントのひとつに、実現可能な設定にするということがあります。そのためには、予想されるコールの量を標準化するという作業はかかせません。コールセンターを自社内に置くか、委託するかということの判断材料にもなるからです。自前のコールセンターを持つか、専門の代行業者にアウトソーシングするか、といった決定を経て、初めて業務プロセスを設計できます。インバウンド業務なら、申し込みや注文の窓口、利用方法や不具合の問い合わせ窓口、支払いに関する窓口として機能しなければなりません。アウトバウンドであれば、アポイントの獲得、調査、未払いへの催促といった業務があります。これらの業務フローを明確化することが業務プロセスの具体化に繋がるのです。
マネジメント
コールセンターを成長させるには応対品質を保持し、顧客満足度を上げる必要があります。コールセンターは自社と顧客を繋ぐツールであり、そこから得られる生の情報を生かすか殺すかで商品やサービスの価値が左右されるからです。重要なのは、応対品質や顧客満足度が可視化されにくいという点で、それを克服するためにはKPIの利用が欠かせません。KPIを使うことで目標を数値化できるため、コールセンターのマネジメント業務にも役立つのです。また、マネジメントを実行する際に最も重要な点は、スタッフが業務プロセスの中で最適な状態でタスクに向かえるか、それをシステムでサポートできているか、ということです。 こうしたシステムを導入、運用、管理し、フィードバックすることがマネジメントの柱です。達成できれば、コールセンターが顧客にとってより有用なサービスになるということです。
人材育成
コールセンターの全業務を下支えしているのは、電話回線を使って顧客とやり取りをするオペレーターです。彼らの「質」が自社の評判を決め、商品やサービスの価値を左右するのです。しかし、オペレーターの応対技術には差が生じやすく、均一の品質を保つことは容易ではありません。人材育成のポイントは、オペレーターだけでなく、彼らを指導するリーダーやスーパーバイザーの成長も促せるプログラムを用意できるかどうかです。現場の底上げを図るためには必要不可欠であり、マネジメントの面でも重要課題となります。応対品質を向上させるには、トークスクリプトと言われる対話シナリオを作成し、問題への対応力を磨くことが近道です。
また、顧客を装ってコールセンターに入電し、抜き打ちでオペレーターの対応をチェックするミステリーコールも有効です。平素、どのように顧客と向き合っているのかが分かり、自社の教育プログラムを改善すべきかどうかを判断する基準にもなります。
コールセンター委託の導入事例
自社内にコールセンターを立ち上げようとすると、一定数・一定品質のオペレーターを確保したり、機材一式を揃えたり、センター用に部屋を設けたりしなければなりません。導入コストが大きい上に、管理維持費もかかってしまいます。コア業務に専念したいのであれば、コールセンターの委託が便利です。ここでは実際に業務委託を決めた業界を紹介し、どのようにアウトソーシングを成功させてきたのかを解説します。
学習塾
東京個別指導学院では、これまで電話交換機を柱としたオンプレミス型のシステムを採用していました。しかし、大型連休や夏休み前になると問い合わせの件数が激増し、閑散期の数倍にもなるため頭を悩ませていたのです。また、学習塾特有の専門性を有した人員をどう確保し続けるかという課題もありました。そこで、クラウド型のコンタクトセンターを採用し、予約の受付や学習相談を行う窓口とシステムをリニューアルすることにしました。今後は、メールやチャット等を活用したノンボイスタイプの問い合わせや相談が増えると見込んでおり、クラウド型のコンタクトセンターへの期待はますます大きくなっています。
旅行業
スカイツアーズでは、従来型のビジネスフォンを利用してきました。最大のネックがコールセンター機能を有していない点で、着信したコールを管理することができず、ガイダンス機能も用意できなかったことから、顧客から不便だという声が多く聞こえていたのです。旅行業としてはかなりの痛手です。内線電話の接続を制御できるPBXは魅力的で、広域に内線網を確保できますが、将来的に業務拡大を目指していることを踏まえれば、コストの面から導入に二の足を踏んできました。そこで、コールセンターをクラウド型にアウトソーシングしたところ、顧客対応力が改善されました。また、移転や業務拡張へのハードルが下がり、将来的に導入を目指している在宅勤務にも道筋がつきました。
テクニカルサポート
コールセンターの代行業者に不可欠なのは、クライアントや顧客の情報を保護することに加え、その業種の専門性が確保できるかどうかです。顧客からは商品やサービスについて突っこんだ質問が入りますし、それらに通じていなければクレームにも適切な対応ができないからです。もちろん、新商品を紹介する場合でも、過去の商品等と比較しなければならず、ハイレベルの知識が不可欠です。テクニカルサポートはこうした専門性の高い相談に応じる仕事で、どんな類の問い合わせもこなせるドクター的な役割を期待されます。コールセンターを委託するのであれば、そうした人材を豊富に用意できる業者をセレクトするのがおすすめです。