コールセンターの稼働率とは?適正数値を保つことが重要な理由をご紹介
コールセンターが適切に運営されているかの判断には「稼働率」の分析が欠かせません。この記事ではコールセンターにおける稼働率についてさまざまな方向から解説しました。稼働率について以下でみていきましょう。
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コールセンターの稼働率とは?
コールセンターにおける「稼働率」とは、オペレーターの「給与支払い時間」に占める「生産時間」の割合のことを指します。この数字を見れば、オペレーターがどれだけの時間を顧客対応に充当しているかが分かります。ただし、稼働率は高ければ良いというものではありません。数値が高すぎると、オペレーターの負担が過剰になっていたり、1件あたりの顧客対応が雑になってサービス品質の低下を招いている場合があるからです。そのため、稼働率は適正な値を保つことが大切とされています。 なお、給与支払い時間とは生産時間と非生産時間を合わせたものです。生産時間とは、保留時間を含む通話時間・後処理時間・待機時間の合計時間です。非生産時間は直接に顧客対応にあたっている時間をのぞいた勤務時間を指します。トイレ休憩・ミーティング・研修時間などが含まれます。ただし、無給となる昼休みなどの休憩時間は含みません。
コールセンターの稼働率が重要な理由は?
目標を立て目標達成のための施策を講じるには、運営状態の把握ができていなければなりません。稼働率を定期的にチェックをして分析すれば、コールセンターの運営状態が見えてきます。そのため、稼働率はコールセンターにとって極めて重要な情報です。 例えば、稼働率を分析すればオペレーターがどれだけスムーズに業務をこなせているかがわかります。そのスキルレベルを推測することも可能です。さらに、コールセンター業務の受付体制に過不足がないかを知ることもできます。突き詰めて分析すれば、離職リスクの把握もできるでしょう。また、分析によって生産時間と非生産時間の適切な管理ができるようになります。もし、午後に集中的に稼働率が高まっているのなら、午前中に研修や会議といった非生産業務を割りあてると、業務のバランスがよくなります。
稼働率と占有率の違いは?
コールセンター業務の管理では「占有率」と呼ばれる指標もよく用いられます。 占有率は稼働率と同じようなものと勘違いされることがありますが、その意味は異なるものです。稼働率は、オペレーターの給与支払い時間における生産時間の割合を指しており、非生産時間の長さによってその値が上下します。対して占有率が示すものは、生産時間のなかで実際に顧客対応した時間(コール処理時間)の割合です。待機時間の長さによってその値が上下します。占有率はあくまで顧客対応に注視する指標です。そのため、占有率の計算には非生産時間が含まれません。 稼働率と占有率のそれぞれの計算方法は次の通りです。
稼働率の計算方法
稼働率の計算式は「稼働率(%)=生産時間÷給与支払い時間×100」となります。 通話時間4時間・保留時間0.5時間・事後処理時間0.5時間・待機時間1時間・非生産時間1時間として、コールセンターの稼働率を実際に計算してみましょう。生産時間は「通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間」なので6時間、給与支払い時間は「生産時間+非生産時間」なので7時間です。「生産時間6時間÷給与支払い時間7時間×100」となるので、稼働率は約85.7%となります。計算式からわかるように、非生産時間が長くなるほど稼働率は低下します。 そのため、トレーニングや研修などに時間がとられる新人オペレーターが多いコールセンターは、一般的に稼働率が低いです。一方で熟練したオペレーターが多いコールセンターは、非生産時間が短く、稼働率が高くなる傾向がみられます。
占有率の計算方法
占有率の計算式は「占有率(%)=コール処理時間÷生産時間×100」です。コール処理時間は「通話時間+保留時間+後処理時間」で計算できます。 稼働率と同じく、通話時間4時間・保留時間0.5時間・事後処理時間0.5時間・待機時間1時間として計算すると、コール処理時間が5時間、生産時間が6時間です。占有率計算式は「コール処理時間5時間÷生産時間6時間×100」となります。その結果、占有率は約83.3%となります。なお、占有率も稼働率と同じく、高ければよいというものではありません。一般的に占有率は、76%から87%ほどが適正値とされています。
稼働率の目安
コールセンターには「COPC® CX規格」という国際品質保証規格があり、この規格はコールセンターのパフォーマンス改善に利用されています。「COPC® CX規格」によれば、コールセンターの稼働率の指標値は1カ月あたり平均86%です。 また、日本のコールセンターの多くは、80%から85%を適正ラインとして、稼働率を設定しているそうです。もし、稼働率90%以上の場合は、何らかの運用上の問題があるか、運用上のリスクを抱えていると考えられています。逆に稼働率70%未満は、効率的なコールセンター運用がなされていない可能性があります。人員の再配置が必要であるといえるでしょう。ただし、コールセンターの稼働率は人員のスキル・季節・曜日といった要素で変化します。そのため、一時的に適正値から外れる値が出ることは珍しくありません。
稼働率とそれに関連するKPIは?
コールセンターの運営の適切性を判断するとき、稼働率だけではなく、それに関連するKPI(Key Performance Indicator, 重要業績評価指標)を元に分析する必要があります。稼働率に関するKPIでは「応答率」と「占有率」がよく用いられています。 「応答率」とはコールセンターへのつながりやすさを見るための指標です。入電件数(コールセンターへのアクセス数)のうち、どれだけの件数を実際にオペレーターが対応したのかを数値化したものです。コールセンターにつながりやすいほど、応答率が高くなります。逆にコールセンターにつながりにくい状態だと、応答率が低くなります。一般的に、応答率が低いコールセンターは顧客満足度が低くなりやすいので、応答率には注意しましょう。応答率は90%以上が適性であるとされています。 ただし、故障や事故といった緊急性が高い問い合わせの場合には97%以上がよいでしょう。稼働率が高いにもかかわらず応答率が低い場合は、人員が足りない、あるいは業務過多が予想されます。オペレーターの増員やシフトの見直しなどの対策が必要です。 「占有率」は稼働率と合わせて分析することで、オペレーター業務の忙しさを把握できます。稼働率と占有率がともに高い状態は、待機時間が少なく、オペレーターの業務に余裕がありません。オペレーターにとって負担が大きい状態になっていると考えられます。オペレーターのストレスを減らすための施策が求められます。それとは反対に、稼働率と比べて占有率が低い状況は、待機時間が長く、入電件数に対してオペレーターの人数が多すぎる状態です。シフトの見直しなど、待機時間を減らす対策をするようにしましょう。 なお、稼働率と関連するKPIでは「AHT(平均処理時間)」「ATT(平均通話時間)」「ACW(平均後処理時間)」「CPC(1コールにかかるコスト)」もよく用いられています。それぞれ以下で見ていきましょう。
AHT(平均処理時間)
1コールあたりの応対処理にかかった時間の平均値がAHT(Average Handing Time, 平均処理時間)です。計算式は「通話時間+保留時間+後処理時間÷通話件数」となります。コール処理時間を通話件数で割った値ともいえるでしょう。AHTが短縮できれば、オペレーターが対応できる問い合わせ件数が増えるため、コールセンターの利益率改善につながります。そのため、AHTの短縮はコールセンター運営において重要な課題です。
ATT(平均通話時間)
コールセンターの収益改善には、通話時間の把握は欠かせません。1コールあたりにおける、オペレーターと顧客との通話時間の平均がATT( Average Talk Time, 平均通話時間)です。計算式は「通話時間+保留時間÷通話件数」です。 ATTの改善にはオペレーターの通話内容のモニタリングが効果的であるとされています。通話中に保留時間が長くなっていないか、ヒアリングが適切であるか、案内内容が冗長になっていないかといった点を調べ、対応内容の無駄の洗い出しをします。場合によってはオペレーターへの指導も必要です。しかし、ATTは短くなればよいというものではありません。入電内容によっては通話時間が長くなることが避けられないものもあります。ATTの短縮を検討する際には慎重な対応が求められます。
ACW(平均後処理時間)
ACW(After Call Work, 平均後処理時間)は、通話対応を終了後にしなければならない作業に費やした時間を表す指標です。通話終了後のワーク時間の合計を対応件数で割ることで算出できます。ACWの値はオペレーターごとの差が出やすい項目です。ACWの短縮を目指す場合には、個人ごとのスキル差を埋めることに着目するとよいでしょう。例えば、トレーニングによってオペレーターのタイピングスキルを向上させることは、非常に効果的です。入力ソフトや入力補助ツールを用いて、ACWの短縮を図るのもよい方法でしょう。 なお、ACWの短縮を目指す場合は、入力された情報の正確さにも目を向けなければなりません。正確な情報が記録されているのか、あるいは、オペレーターごとに入力すべき項目に違いが生まれていないか、といった確認が求められます。コールセンター業務において、顧客対応で得られる情報は大変重要なものです。ACWの短縮もまた慎重な対応で臨む必要があります。
CPC(1コールにかかるコスト)
CPC(Cost Per Call,1コールにかかるコスト)は、全体のコストを通話数で割ることで算出できる、電話応対1通話あたりのコストについての指標です。CPCはコールセンターの業務内容や対応件数によって大きく異なります。ですからCPCの目安はそれぞれの企業で決定しなければなりません。計算に含むべきコストについても、それぞれの企業で決める必要があります。例えば、コールセンターの人件費のみに注視したい場合などは、CPCの計算に使うコストを人件費に絞って計算するとよいでしょう。 しかし、一般的には、CPCに含めるコストについては、およそコールセンター業務にかかわる全てのコストを含めて計算するのが望ましいでしょう。また、扱ったコストは、直接経費・全社経費・変動費・固定費など明確に区分しておくようにしましょう。どのコストがCPCの変動に影響を与えているのかが分かりやすくなります。
コールセンターの稼働率を保つためには?
定期的に管理ツールやシステムでチェックすることで、稼働率の変化をいち早く察知できます。稼働率に変化があったときには、理由を分析してなるべく早く対策を施すことが大切です。では、コールセンターの稼働率を適正値に保つにはどうすればよいのでしょうか。以下では稼働率を適正に保つための手法について解説します。
適切な人員数を配置する
稼働率を適正範囲に保つには、人員を増やして配置することが最も手早い対処方法です。一般的に配置されたオペレーターの数が増えるほどに稼働率は上昇します。しかし、人員を増やしすぎると、待機時間の割合が増えるため、占有率や業務効率が低下します。業務効率を下げないように稼働率を適正範囲に保つためには、適切な人員数を配置しなければなりません。では、何人の人員を配置するのが適切なのか、正確に把握するにはどうすればよいのでしょうか。 適切な人員数を割り出すには、毎日の業務量の測定が重要です。1時間・1日・1カ月と単位ごとに業務量を測定して記録していき、将来のコールセンターの業務量を予測します。そのうえで、予想業務量とAHT(平均処理時間)から、業務処理に必要だと考えられる人員の数を割り出すとよいでしょう。
ステータス管理を徹底する
オペレーターのステータス管理を徹底すれば、より正確な稼働率の算出ができるようになります。ステータスには「通話中」「後処理中」「離席中」などがあります。ステータス管理では、コールセンター内の入力ルールを徹底してもらうことが大切です。もし、入力漏れや入力ミスがあると、正確な稼働率算出が難しくなるためです。また、管理したいステータスをあまり細かく設定すると、かえって入力漏れや入力ミスの原因となります。ステータスはコールセンターにとって必要なものだけに限り、オペレーターに入力の煩雑さを感じさせないように工夫するようにしましょう。
待機時間を教育に充てる
人員の調整やステータス管理で稼働率が改善しない場合には、非生産時間を見直してみるとよいでしょう。例えば、生産時間に含まれている「待機時間」をオペレーターの教育時間に充てれば、非生産時間を増やせるので稼働率が低下します。 例えば、給与支払い時間8時間・生産時間7時間・非生産時間1時間・待機時間2時間とします。この場合の稼働率は87.5%です。ここで、待機時間を1時間教育にあてると、給与支払い時間8時間・生産時間6時間・非生産時間2時間・待機時間1時間となります。すると稼働率は75%に下がります。このようにすれば、稼働率を下げたとしても、実際の顧客対応の仕事量には変化がありません。なお、稼働率が低すぎる場合は、逆に非顧客対応時間を減らして顧客対応時間を増やすことで、稼働率を向上させられます。
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