コールセンターのACW(平均後処理時間)とは?短縮する方法を解説
2024.09.30|⟳ 2025.08.04|コールセンターコールセンターにおける業務効率は、決められた時間でどれだけ多くの顧客を対応するかが大きな影響を及ぼします。
業務効率を度外視しても、多くのオペレーターは短時間で問題を解決したいと考えていることでしょう。
また、コールセンターでは電話をしたあとに応対内容の記録や、意見や問い合わせの共有など、後処理を行います。
本記事では、コールセンター後処理時間(ACW)の効果的な短縮方法と、その重要性をご紹介します。
コールセンターの後処理時間(ACW)とは?
コールセンターの後処理時間(ACW:After Call Work)とは、電話対応をしたあとの作業を指します。
ACWには応対内容の記録や顧客からの意見や問い合わせの共有、他部署への伝言などさまざまな要素が含まれます。
これらの作業にかかる時間を減らすことによって、オペレーターはより多くの顧客対応が実現できるのです。
顧客満足度向上を目的として、企業のなかにはACWをKPIにしているところがあります。
「AHT」「ATT」との違い
コールセンター業務で重要な指標としてよく取り上げられるのが「AHT(Average Handling Time:平均処理時間)」や「ATT(Average Talk Time:平均通話時間)」です。
これらは、ACW(After Call Work:後処理時間)と混同されやすいため、それぞれの違いを正確に理解しておく必要があります。
ATTとは、オペレーターが顧客と実際に通話している時間の平均を指しており、こちらは話している時間に該当します。
一方、AHTは「ATT+保留時間+ACW」の3要素で構成されており、1件の問い合わせ全体にかかる時間を表します。
つまり、ACWはAHTを構成する主要な要素のひとつであり、AHTを短縮するにはACWの最適化が極めて重要です。
AHTの長短は、顧客満足度や業務効率に大きく影響します。
たとえば、ACWが長すぎると、オペレーターの稼働率が下がり、待ち時間の増加や生産性の低下を引き起こす可能性があります。
ACW・ATT・AHTの関係性を理解し、バランスよく改善していくことが、コールセンター全体のパフォーマンス向上につながります
ACWの平均値
ACWの所要時間は業界や業務内容によって異なりますが、一般的には30秒〜90秒が目安とされています。
たとえば、注文受付などのシンプルな業務では30秒前後、テクニカルサポートのような複雑な対応が必要な業務では、120秒を超えることも珍しくありません。
自社のACWがこの平均と比較して極端に長い、または短い場合は、業務フローの見直しやツールの改善、オペレーターのスキル向上などが求められます。
特に、後処理が属人的になっていたり、テンプレートやマクロが整備されていない場合は、ACWが無駄に長引いてしまう原因となります。
ACWの計算方法
ACWは以下の式で算出されます。
- ACW(秒)= 通話終了後の後処理時間 ÷ コール件数
たとえば、あるオペレーターが1日に80件の通話対応を行い、合計の後処理時間が4,000秒だった場合、下記のように算出できます。
- ATH = 4,000秒 ÷ 80件 = 50秒/件
このように、数値で可視化することで業務改善の方向性を明確にできます。
また、KPIとして日々モニタリングを行うことで、応対効率の維持・向上にもつながります。
参考ページ:当社コラム「コールセンターは目標設定が大切!KPIの例とあわせて解説」
コールセンターにおける後処理時間短縮の重要性
コールセンターでACWを短縮する理由は、顧客満足度に影響を及ぼすことが挙げられます。
たとえば、ACWに10分かかっているオペレーターと、5分で完了するオペレーターがいるとします。
後者の場合、前者よりも5分短いことから、その間に別の顧客対応をできるのです。
コールセンターにかかってくる電話の多くは、顧客が抱えている何らかの課題を解決することが挙げられます。
ひっきりなしに電話がかかってくる可能性があり、コールセンターにつながらなかった場合は顧客のストレスになります。
ACWを短縮することは、オペレーターの対応効率を高め、待機時間の削減と顧客満足度の向上につながります。
全体の処理能力を高めるうえでも、ACWの最適化は不可欠です。
ACWが長くなる原因
平均値を理解し、目標値を設定しても、なかなか達成できずACWが長くなってしまうことがあります。
こちらでは、コールセンター業務で後処理時間が長くなる理由をご紹介します。
オペレーターのスキル・経験に差がある
どのような業務でも、長年勤務しているベテラン社員と、新入社員ではスキルや経験に大きな差があります。
作業が不慣れだったり、まとめる情報を整理できていなかったりすると、多くの時間を要してしまいます。
また、効率化が実現できていない場合、全オペレーターが業務に多くの時間を要するため、改善が必要です。
とくに後処理業務では、情報を簡潔にまとめるスキルや業務知識が問われるため、教育体制の整備が重要です。
具体的には、定期的なロールプレイングやFAQの共有、フィードバック体制の強化がACW短縮につながります。
属人的な作業を減らし、チーム全体で一定の品質とスピードを担保することが求められます。
マニュアルが不完全で後処理のフローが複雑
ACWのマニュアルがあれば、何をどのように伝え、どのような後処理をすれば良いかを一目で理解できます。
一方、マニュアルがなかった場合はオペレーターの経験がACWに大きな影響を及ぼすほか、業務の平準化ができません。
特にマルチチャネル対応を行っているコールセンターでは、メール・チャット・電話など媒体ごとに処理ルールが異なる場合があり、マニュアルの整備が不十分だと混乱を招きやすくなります。
そのため、媒体別・ケース別のフローを図解付きで明示したり、業務マニュアルに検索性を持たせたりといった工夫が求められます。
さらに、マニュアルを定期的に見直し、現場の声を反映する運用体制が重要です。
情報の共有・伝達の不足
オペレーターにとって、顧客からの受電内容を適切に伝えられないことは、業務効率や顧客満足度を低下させる要因となります。
後処理で記録すべき内容が曖昧だったり、チーム内で引き継ぐ情報が不十分だったりすると、二度手間が発生したり、顧客対応に齟齬が生じる可能性があります。
その結果、クレーム対応や問い合わせの再発につながるケースもあります。
共有テンプレートやCRMの活用によって、情報の正確性と一貫性を担保する仕組みづくりがACWの質とスピードを改善するカギとなります。
ACWを短縮する方法
ACWを短縮するには、人的要素・業務プロセス・システムの3つの観点から改善が求められます。
以下では、ACWを短縮する方法をご紹介します。
オペレーターの教育・研修を行う
業務内容を的確に理解し、迅速に処理できるよう、定期的な研修やロールプレイングを実施することが有効です。
新人教育だけでなく、定期的なスキルアップ研修やベテラン同士のナレッジ共有の場を設けるのも効果的です。
また、後処理作業の演習や記録方法の標準化により、対応速度と品質の均一化を図ることができます。
FAQやテンプレートの活用によって記録作業の効率化も図れます。
業務フローの見直し
引継ぎや新入社員でもスムーズに業務を行えるように、コールセンターには業務マニュアルを用意しておきましょう。
たとえば、記録内容の重複入力や確認プロセスの煩雑さがある場合は、業務の棚卸しと標準化が必要です。
マニュアルなどに何をどのように情報を伝えるのかを明記するなどによって、モレなく・ダブりなく伝える工夫が必要です。
後処理の内容を整理し、入力項目を絞ることや、優先順位を明確にすることで、処理のスピードを上げることができます。
コールセンターのシステムを導入する
また、近年では自動で情報を記録してくれたり、AIが搭載されていたりするツールが提供されているため、そちらもおすすめです。
たとえば、CRMシステムとCTIシステムを連携させることで、通話履歴の自動記録や顧客情報の自動表示が可能になります。
さらに、音声認識や自動入力補助機能を活用すれば、記録作業の負担を軽減し、ACWを大幅に短縮できます。
ACWを短縮することで業務効率が向上し、結果として時間あたりの対応数が増加します。
より多くの顧客の課題を解決するため、積極的にACW短縮を試みましょう。
ACW短縮の注意点
ACWの短縮はコールセンター業務の効率化に大きく寄与しますが、実施にはいくつかの注意点があります。
効率化だけを優先すると、対応品質の低下や従業員の負担増につながる可能性があるため、バランスの取れた施策が求められます。
まず注意すべきは、処理スピードの向上が業務の「正確性」や「対応の質」を損なわないようにすることです。
後処理の時間を極端に短く設定した場合、記録漏れや入力ミスが増加し、顧客対応の再発やトラブルを引き起こす恐れがあります。
また、ACW短縮のプレッシャーが過剰になると、オペレーターの心理的負担が増し、離職率上昇につながる可能性も考えられます。
上記より、ACWは単純な数値目標としてではなく、業務全体の質と効率の両面を考慮したうえで設定・運用することが重要です。
おわりに
本記事では、コールセンター後処理時間(ACW)の効果的な短縮方法と、その重要性をご紹介しました。
コールセンターの後処理時間(ACW:After Call Work)とは、電話対応をしたあとの作業を指します。
ACWが長くなる要因はスキルや経験の差、マニュアルが不完全であること、情報の共有・伝達の不足が挙げられます。
これらはオペレーターの教育・研修や業務フローの見直し、コールセンターのシステムを導入するなどによって、短縮することができます。
しかし、ACWを極端に短くすると記録漏れや入力ミスのほか、心理的負担による離職率が上昇してしまいます。
そのため、まずは正確性や対応の質を損なわないことが重要です。
オペレーターの業務に時間がかかっている場合は、何に時間がかかっているのかを分析してみましょう。


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